sel sal saleシェフ濱口 昌大
東京・恵比寿にある創作イタリアン「sel sal sale(セルサルサーレ)」は、オーナーシェフ、濱口昌大(はまぐち・まさひろ)さんの独創的かつ誰もが美味しいと感じる料理が人気を博しています。濱口シェフはイタリア各地でも修業を重ね、ある店では“1日200尾の魚をさばいた”こともあったそう。今回はそんなイタリアで出合った「ガルム」という魚醤(ぎょしょう)をピックアップ。日本人にもなじみのある醤油味にうま味や香りが加わった料理をご紹介します。
料理:濱口昌大 / 構成:森綾 / 写真:木村文平
イタリアの魚醤「ガルム」
魚醤とは、魚を塩とともに発酵させた調味料のこと。日本にもハタハタを使った秋田県の「しょっつる」、石川県のイワシを使った「いしる」、イカナゴを使った香川県の「いかなご醤油」など各地にご当地魚醤があります。
タイの「ナンプラー」や、ベトナムの「ニョクマム」も同じ魚醤の仲間ですが、イタリアにも魚醤があるんです。日本で最初に広く知られるようになったのは、「コラトゥーラ・ディ・アリーチ」。南イタリアの伝統的調味料で、カタクチイワシと塩を使い、熟成・発酵させたものです。カタクチイワシはアンチョビの原料でもありますが、長期熟成することで薄口醤油のような色合いになり、上品な香りとコクが生まれます。
しかし、このコラトゥーラは値段が高いのがやや難点。そこで注目したいのが「ガルム」です。古代ローマ時代からつくられていたと言われる魚醤で、カタクチイワシのほか、いくつかの魚を原料にしているようです。コラトゥーラより少しお手頃な価格で手に入るものもあります。ネットでも購入できますので、ぜひ探してみてください。
イタリアの魚醤・ガルムは、ナンプラーやニョクマムに比べると香りにクセがないので、醤油のような感覚で使うことができます。例えば、一般的な照り焼きのタレは、日本酒、醤油、みりんを1:1:1で合わせるとバランスよく仕上がりますが、この日本酒をワインに、醤油をガルムに替えると、洋風になるわけです。今回はその応用で「イタリアン照り焼きチキン」をつくりました。
もう一品はガルムのうま味が利いた、「切り干し大根入りペペロンチーノ」です。僕はペペロンチーノにかなりの量のにんにくを使います。パスタ100gに対して15gほど、にんにく3片くらいですかね。イタリアの各地を回りましたが、これくらいは普通に使います。日本では1片程度ですよね。思い切ってたくさん使うと美味しいですから、「なんとなく味が決まらない」と感じたら、やってみてください。
今回はスパゲティの茹で汁に塩を入れていません。ガルムでしっかり味がつくため、不要です。「茹で汁には塩を入れる」「にんにくは1片」といった固定観念に縛られていませんか。調味料や食材によって臨機応変に。料理はその時々のご自身の「美味しい」を大事にしてください。今回のレシピ、風味は多少変わりますが、ガルムを日本の魚醤に置き換えることもできます。
鶏もも肉・・・220g
れんこん・・・100g
小ネギ(小口切り)・・・適量
粒マスタード・・・小さじ1
〈A〉
赤ワイン・・・大さじ2
みりん・・・大さじ2
ガルム・・・大さじ2
上白糖・・・大さじ2
スパゲティ・・・100g
イタリアンパセリ・・・適量
切り干し大根(乾燥)・・・10g
水・・・80g
にんにく(みじん切り)*・・・15g
ピュアオリーブオイル*・・・15g
鷹の爪・・・1/2本
ガルム ・・・20g
エクストラバージンオリーブオイル・・・10g
* 材料写真ではにんにく(15g)とピュアオリーブオイル(15g)が混ざった状態
PROFILE
濱口昌大(はまぐち・まさひろ)
1979年、大阪府寝屋川市生まれ。25歳のとき、マリオ・フリットリ氏に師事し、「Ristrante Luxor(リストランテ ルクソール)」にて修業を開始。イタリアンレストランを皮切りに、フランス料理「En condition(アンコンディション)」などで勤務した後、「六本木農園」シェフに就任、東京と農家を結ぶコンセプトレストランを運営する。 2010年イタリア、プーリア州に渡り「Ristorante Sotto l'Arco (リストランテ ソットラルコ)」(ミシュラン1つ星)にて修業。 イタリアの地産地消の哲学・ワイン文化に影響を受け、食文化を学ぶためヨーロッパ・北欧10カ国ほどをまわる。 2014年、東京・世田谷区池尻にレストラン「sel sal sale(セルサルサーレ)」をオープン。 2017年に恵比寿へ移転、現在に至る。飲食コンサルタント、また、食の専門学校「レコールバンタン」の講師としても活動中。