舘野真知子「梅酒ゼリーから鶏手羽の煮込みまで。焼酎でさっぱり仕上げのレシピ」

はじめての発酵食レシピ Vol.03梅酒ゼリーから鶏手羽の煮込みまで。
焼酎でさっぱり仕上げのレシピ

料理研究家・管理栄養士舘野 真知子

家庭で楽しめる身近な「発酵」のひとつが、果物を酒に漬けた果実酒。料理研究家で管理栄養士の舘野真知子さんは、20年以上、梅酒を漬けているのだそう。さっぱり仕上げたいレシピには焼酎がぴったり、とのことで「はじめての発酵食レシピ」第3回では、焼酎(ホワイトリカー)で漬けた梅酒の味わいを活かしたデザート、本格麦焼酎「いいちこ」を使った鶏手羽の煮込み料理を教えていただきます。

文・写真:舘野真知子

梅酒にはその年毎の思い入れがある

私は葉山に引っ越してくる前から、もう20年以上、毎年、梅仕事として梅干しや梅酒を漬けています。
梅酒の古いものは色も味も濃厚になって、どんどん熟成していきます。さすがにさらっと飲めるような代物ではなくなってしまいますが、その年の梅酒はその年の思い出をもっているので、飲み切ってしまうのも寂しいような気がして。そんなことを思っていると、どんどん溜まっていくのです。

特に、5年前に亡くなった義父が千葉の鴨川で梅農家をやっていて、健在だった頃に手伝って、一緒に漬けたものがあるのです。それはなかなか飲めません。

義父はもともと写真館を経営していたのですが、あるとき、店を畳んで土地を買い、梅の木を100本くらい植えて、かなり本格的に農業を始めたのです。

あの時の梅はこうだったな、こんな話をしたな……そんなことを思い出していると、その年の梅酒は飲まずに置いておきたくなるのです。

梅酒

私の梅酒づくりの配合は、すっきりめ

すっきりと飲み口の良い梅酒は、その年に漬けたものです。
私の梅酒は配合が決まっていて、梅1kgに対し、焼酎(ホワイトリカー)を1.2L、氷砂糖は600g。

昔は梅と同量の氷砂糖を入れた人も多かったようですが、かなり甘くなりますので、健康志向の今はそのくらいでいいのではと思います。それに、甘味は後から足せますからね。ブランデーで漬けることもありますが、すっきり度合いは、焼酎に軍配が上がります。

※自家製梅酒をつくる場合、酒税法の規定で、アルコール20度以上の酒類で漬けなければならず、ぶどうや穀類等と一緒に漬けることは禁止されています。自家製梅酒は、他者への提供や販売、譲渡はできません。

残った梅酒でデザートづくり

焼酎で漬けた梅酒は、さっぱり系のデザートが欲しいときにいいですね。瓶の底に2〜3cm残っている、なんていう時にぜひ試してもらいたいです。

今回のレシピはキウイを加えたり、炭酸水を加えたりしています。キウイもキッチンに1個だけ転がっていたりしませんか。つぶつぶの食感や果肉感が梅と似ているので、相性がいいですよ。

でも、何もなくても水とお砂糖と梅酒があれば、シャーベットはできてしまいますし、ゼラチンを入れたらゼリーになります。気負わず、構えず、ぜひ作ってみてください。

梅酒とキウイのソルベ

素材の脂っこさを抜き、柔らかくしてくれるのが焼酎

料理にお酒を使う効能はいろいろありますが、日本酒と本格焼酎ではその特性が大きく違ってきます。日本酒は米の旨味が強い。これに対して本格焼酎の効能は、肉などの脂っこい素材をさっぱりさせ、柔らかくしてくれることでしょう。また、肉の臭みをとるのにも適しています。

本格焼酎は味わいがスッキリしているものが多いので、少し濃いめに味をつけると良いでしょう。今回は本格麦焼酎「いいちこ」で鶏手羽を煮てみましたが、何も入れない時の半分くらいの時間で柔らかくなるイメージですね。脂切れも良いので、豚の角煮などにも向いているでしょう。本格焼酎を使うときのポイントは、アルコールを飛ばすこと。アルコールは沸騰させると飛びますから、グツグツ煮れば大丈夫です。

こちらもぜひ試してみてくださいね。

発酵食RECIPE

梅酒とキウイのソルベ

梅酒とキウイのソルベ

▼材料/4人分
梅酒
120ml
200ml
グラニュー糖
大さじ1
キウイ
1個
梅酒とキウイのソルベの材料
▼作り方
  1. キウイは皮をむき、細かく切る。
  2. 鍋に梅酒を入れ沸騰したらグラニュー糖、水を入れ混ぜ、常温に冷ます。
  3. 2をタッパーなどに入れ、冷凍庫で約2時間冷やし固める。一度取り出して、ほぐし混ぜ、キウイを入れてさらに混ぜて冷凍庫に入れる。
  4. さらに2時間以上凍らせたら取り出し、スプーンで削るようにほぐす。
  5. 器に盛り付ける。
スプーンで削るようにほぐす
梅酒のしゅわしゅわゼリー

梅酒のしゅわしゅわゼリー

▼材料/4個分
梅酒
200ml
グラニュー糖
大さじ3
粉ゼラチン
5g
大さじ1
炭酸水
100ml
梅コンポート(あれば)
4個
梅酒のしゅわしゅわゼリーの材料
▼作り方
  1. 水に粉ゼラチンをふるい入れふやかす。
  2. 鍋に梅酒を入れ沸騰させ、グラニュー糖を入れ溶かす。
  3. 1を2に入れ溶かし、常温になるまで冷水にあてて冷やす。
  4. 炭酸水を加え混ぜ、梅のコンポートを入れた器に注ぎ入れ、ラップをして冷蔵庫で冷やす。
鍋に梅酒を入れ沸騰させ、グラニュー糖を入れ溶かす
鶏手羽の甘辛焼酎煮

鶏手羽の甘辛焼酎煮

▼材料/4人分
鶏手羽
8本
生姜皮付きスライス
3枚
にんにくスライス
1かけ分
赤唐辛子(種ぬき)
1本
いんげん
8本
いいちこ
100ml
だし汁
200ml
きび砂糖
大さじ2
醤油
大さじ1と1/2
鶏手羽の甘辛焼酎煮の材料
▼作り方
  1. 鶏手羽をフライパンに入れ両面を焼き付ける。いんげんはさっとゆで、冷水にとり斜め半分に切る。
  2. 鶏手羽に焼き目が付いたら、いいちこを入れ沸騰させ、だし汁、きび砂糖、醤油、生姜、にんにく、赤唐辛子を入れフタをして弱火で15分間煮る。
  3. フタを開けて中火で煮汁を飛ばしながら、鶏手羽をひっくり返し、からめるように煮る。
  4. 煮汁が少し残るくらいで火を止め、鶏手羽といんげんを器に盛り付ける。
鶏手羽をフライパンに入れ両面を焼き付ける。
舘野真知子(たての・まちこ)

PROFILE

舘野真知子(たての・まちこ)

料理研究家・管理栄養士。栃木で8代続く専業農家に生まれる。管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドの料理学校「Ballymaloe Cookery School」に留学。2003年に帰国後はフードコーディネーターとしてメディアなどで活動。2009年にはレストラン「六本木農園」の初代シェフを務め、新鮮な素材を生かして都市生活者の健康を意識した料理を提供。日本に伝わる伝統的な食文化を、現代の形に合わせてつないでいくワークショップなども企画・運営する。現在はフリーランスの料理家として、発酵料理をキーワードに、料理の楽しさや食べることの大切さを伝える活動をしている。