sel sal saleシェフ濱口 昌大
東京・恵比寿にある創作イタリアン「sel sal sale(セルサルサーレ)」。オーナーシェフ濱口昌大(はまぐち・まさひろ)さんは、全国各地を旅し、美味しくて、身体にも良い食材を探し出す名手でもあります。今回は、ネットで入手しやすい「みりん粕(かす)」を発酵食材としてピックアップ。「こぼれ梅」とも呼ばれるこの和な食材を、まったく洋風にアレンジします。
料理:濱口昌大 / 構成:森綾 / 写真:木村文平
以前、みりんを製造している会社の人に出会い、東京で「KAMOSU(醸す)」という食のイベントを一緒にやりませんか、とお声がけいただきました。
計画を進めましたが、イベント自体はコロナ禍で中止に。でもその過程で発酵食材として紹介していただいた「みりん粕」と出合うことができました。別名「こぼれ梅」とも呼ばれます。もち米などからみりんをつくる工程でできる搾りかすですが、酒粕のような独特の香りもほとんどなく、上品で自然なもち米の甘みが残っていて美味しいのです。
また酒粕と同様に、レジスタントプロテイン*1を含んでいて、コレステロール値を下げたり、腸内環境を整えるなど、さまざまな効果が期待できるヘルシー食材です。*1 レジスタントプロテイン:米、酒粕、みりん粕などに含まれる、難消化性たんぱく質のこと。通常たんぱく質は体内に入ると胃で分解されるが、レジスタントプロテインは分解されず小腸へ移動し、腸内環境を整えるほか、健康的にコレステロール値を下げて、健康につながる免疫力を整えるなどさまざまな効果が期待できる。
なぜこれがスーパーに並ばないのか。生産量が少ないのかもしれません。その美味しさが生かされる料理が知られていないという理由もあるかもしれません。ネットでは常時販売されているようですし、発酵食品の専門店などでも手に入りますから、ぜひ手に取ってみてください。
みりん粕を口にした瞬間、「これは洋風にアレンジできる」と感じました。「sel sal sale」は基本的にイタリアンをうたっていますが、ひとりに1皿ずつ、10皿程度を提供する創作料理のスタイル。店ではサワードブレッドにみりん粕を練り込んだり、またはクリームとして使って、その上に生ハムをのせるトーストを提供したりしています。
今回はこの生ハムトーストを、ご家庭でもつくりやすい食パンに置き換えた「みりん粕バタートースト、生ハムのせ」をご紹介します。みりん粕とバターの組み合わせは、飽きのこない優しい甘さ。ジャムトーストやシュガートーストよりも健康的です。
もうひとつ、冷やすだけで固まる「みりん粕チョコレートムース」も考えてみました。豆腐を入れることで栄養価も高まり、とてもなめらかで濃厚な味わいに。砂糖は使わず、自然の甘みがあるメープルシロップを使用します。今回はホワイトチョコレートにしましたが、ブラックチョコレートでつくるとさらに濃厚な大人の味わいになりますよ。
みりん粕、見慣れない食材ですが、実は扱いやすい発酵食品です。ぜひ臆せず試してみてください。*2*2 みりん粕にはアルコール成分が含まれています。運転時などや、お子様、お酒に弱い方、妊娠・授乳期の方はご注意ください。
食パン6枚切り・・・2枚
無塩バター・・・70g
みりん粕・・・70g
生ハム・・・10カット程度
ホワイトチョコレート・・・70g
メープルシロップ・・・20g
絹豆腐(常温にする)・・・200g
みりん粕・・・50g
PROFILE
濱口昌大(はまぐち・まさひろ)
1979年、大阪府寝屋川市生まれ。25歳のとき、マリオ・フリットリ氏に師事し、「Ristrante Luxor(リストランテ ルクソール)」にて修業を開始。イタリアンレストランを皮切りに、フランス料理「En condition(アンコンディション)」などで勤務した後、「六本木農園」シェフに就任、東京と農家を結ぶコンセプトレストランを運営する。 2010年イタリア、プーリア州に渡り「Ristorante Sotto l'Arco (リストランテ ソットラルコ)」(ミシュラン1つ星)にて修業。 イタリアの地産地消の哲学・ワイン文化に影響を受け、食文化を学ぶためヨーロッパ・北欧10カ国ほどをまわる。 2014年、東京・世田谷区池尻にレストラン「sel sal sale(セルサルサーレ)」をオープン。 2017年に恵比寿へ移転、現在に至る。飲食コンサルタント、また、食の専門学校「レコールバンタン」の講師としても活動中。