ロックンロールバンドSIX LOUNGE(シックスラウンジ)

大分ゆかりのあの人 第19回骨太でストレートなロックンロールを、大分から響かせる

ロックンロールバンドSIX LOUNGE

「リカ」のバイラルヒットや人気アニメ「BLEACH(ブリーチ)」主題歌提供、そしてYouTubeの人気音楽コンテンツである「THE FIRST TAKE」への出演などで注目を集める大分出身の3ピースロックンロールバンド、SIX LOUNGE(シックスラウンジ)。メンバーであるギター・ボーカルのヤマグチユウモリさん、ドラムのナガマツシンタロウさん、ベースのイワオリクさんに、SIX LOUNGEとしての現在地や地元大分を活動拠点とすることへの思いなどについて、お話を聞きました。
文:池谷恵司 / 写真:三井公一

コピーはしなかった。バンドならオリジナルじゃないと、と思ったから

――SIX LOUNGEはどのようにして結成されたのでしょうか。

ヤマグチ 僕とシンタロウ(ナガマツ)が高校の同級生なんです。バンドをやりたくて音楽科のある大分県立芸術緑丘(みどりがおか)高等学校に入学したんですが、学校の練習室でめちゃくちゃドラムを叩いているやつがいて、すぐにバンドに誘いました。それがシンタロウでした。

ナガマツ 僕はドラムがやりたくて、打楽器専攻で緑丘に入りました。

左からドラムのナガマツシンタロウさん、ギター・ボーカルのヤマグチユウモリさん、ベースのイワオリクさん左からドラムのナガマツシンタロウさん、ギター・ボーカルのヤマグチユウモリさん、ベースのイワオリクさん

――バンドをやりたいと思ったきっかけはなんでしたか。

ヤマグチ 中学生の時は弾き語りをやっていて、当時一番好きだったのが斉藤和義さん。斉藤さんはソロですが、すごくバンドっぽいサウンドなので、「こういう感じのバンドをやりたい」と思ったんです。

ナガマツ 家族が音楽好きで、小さい頃からドラムに触れていました。クイーンのロジャー・テイラーに憧れていたので、それでバンドをやりたいと思ったんです。

――ベースのイワオさんは、どんなきっかけでSIX LOUNGEに入ったのですか。

ヤマグチ リク(イワオ)は学年が1つ下の後輩です。最初、ベースは中学の同級生だったんですけど就職を機に辞めて。次にシンタロウの中学校の同級生が入ったんですけど、彼も進学で辞め、その後に入ったのがリクです。

――イワオさんがベースを弾きたいと思ったのはどうしてですか。

イワオ 自分は洋楽に影響を受けて。ビートルズが好きで、特にポール・マッカートニーが大好きだったのでベースを弾いてました。

――高校でバンドを組んで、最初はどんな曲をやったんですか。

ヤマグチ 最初からオリジナルでしたね。コピーもやったけど、2、3曲くらい。バンドをするんだったらオリジナルじゃないと、と思っていたので。でも曲作りの経験はなかったから、最初はシンタロウといっしょに部屋でギターをポロポロ弾いてメロディーを作って「曲できたから、風呂入ってる間に歌詞つけてもらっていい?」とかって感じで作ってました(笑)。

――SIX LOUNGEはかなり王道なロックサウンドですが、最初からこんな感じだったのですか。

ヤマグチ いや、最初はもっとパンクっぽかった。「ティーン・エイジ・パンクロック」という言葉がバンド名についていたこともありました。でもそのうち王道っぽい感じになっていきました。

やりたいことをやりつつ、多くの人に聴いてもらえることを考えるようになった

――最初からプロを目指していたのですか。

ヤマグチ いやいや全然です。最初は割とフワフワしてたんですが、高校3年の頃にはワンマンライブをやってお客さんもだんだん増えてきたので、徐々に音楽でやっていこうっていう気になりました。

SIX LOUNGE(シックスラウンジ)ヤマグチユウモリさんヤマグチユウモリさん(ギター・ボーカル)

初めて東京遠征したときに、インディーズ・レーベルTHE NINTH APOLLO(ザナインスアポロ)のイベントに出演しました。その時レーベルの社長さんに「いつか一緒にやろう」と言ってもらって、高校卒業してすぐ、そのレーベルからCDを出しました。当時はまだ何も分かってなくて、ただCDを出せたのがうれしかったです。そこからは、レーベルの先輩バンドのツアーに帯同したことで、徐々にファンが広がっていきました。

――その後、メジャーレーベルへ移るんですね。

ヤマグチ そうです。最初はユニバーサル ミュージックに行きました。でも、まだ気持ち的にはインディーズとあまり変わらず、まわりに大人が増えたなって感じでした。ユニバーサルとの契約期間が終了して、ソニー・ミュージックレーベルズに移籍しました。

ソニーに移籍してから制作への姿勢が大きく変わったんです。今、世間ではどんな音楽が聴かれているかを意識したり、飽きさせないコード進行やメロディーを考えるようになりました。そういうことって、それまでは全くしていなかった。単に「これかっこいい」だけで曲を作っていたので。曲の長さも深く考えてなくて、長い曲もたくさんありました。

――好きに表現していたそれまでと、今とどっちがいいですか。

ヤマグチ 音楽のことを知った上で、好きなことができれば、それが一番かっこいいですよね。そうすれば自分たちがやりたいことを、たくさんの人に聴いてもらえますから。これは「進化」だと思います。好きなことを続けるための。だって売れなければある日「はい、終わり」ってなる可能性もありますよね。

SIX LOUNGE(シックスラウンジ)ヤマグチユウモリさんヤマグチユウモリさん(ギター・ボーカル)
大分市にある音楽スタジオ「T.O.P.S LABO」

「リカ」は高校時代の曲。aikoさんが紹介してくれてブレイクした

――代表曲の一つである「リカ」は、2023年にTikTokで大きな話題となりYouTubeの「THE FIRST TAKE」でも演奏しています。この曲はどのように生まれたのですか。

ヤマグチ 高校2、3年の頃に当時のベーシストが作った曲で、僕は歌とギター、アレンジを手伝ったくらいです。リリース直後は全然反響がなくて、ライブでもセットリストから外していたこともあったくらい。ブレイクのきっかけは、aikoさんがテレビで紹介してくださったこと。そこからTikTokなどで再生されてバズった感じです。僕たちにとっては数ある曲の一つだったので、逆にびっくりしましたね。

――「THE FIRST TAKE」での「リカ」の演奏いいですね。ベースが、あまり見たことがないモデルで気になりました。

ヤマグチ ありがとうございます。

イワオ 大分の工房で作ったフルオーダーのベースです。気づいてもらってうれしいです(笑)。

SIX LOUNGE - リカ / THE FIRST TAKE

今はいろんな形態があるかもしれないけど、バンドがやりたかったし、一番カッコイイ

――最近は編成が自由なユニットだったり、打ち込みやDJのように必ずしも生演奏を必要としない形態も増えています。SIX LOUNGEが「バンド」にこだわっているのはなぜですか。SIX LOUNGEの「LOUNGE」もザ・ローリング・ストーンズのアルバム「Voo doo Lounge」からとってるんですよね。

ヤマグチ はい、ストーンズからです。僕はバンドでやるか、一人でやるかしか音楽のやり方を知らなかったんですよ。バンドの方がかっこいいじゃないですか。特にライブってバンドの方がかっこいい。今どき、3人で生楽器だけでやっているのって逆にいいと思うんですよね。

ナガマツ 今はヘッドホンでクリック*1を聴きながら打ち込み音源に合わせて演奏する人たちも多いし、それもいいとは思うけど、個人的にはそれならドラマー要らないよなって。だから、人間の演奏だけでドラムを叩く方がカッコいいと思ってます。*1 クリック:レコーディングやライブ演奏時に、テンポを一定に保つためのガイド音のこと。

SIX LOUNGE(シックスラウンジ)ナガマツシンタロウさんナガマツシンタロウさん(ドラム)

イワオ とにかく今まで聴いたり観たりしていたのがバンドで、その形に憧れていたから、やっぱりバンドがいい。人数も少なくてシンプルなのが一番いいかなって思います。

――リスナーとしてもSIX LOUNGEにはバンドならではの良さを感じます。高校時代からの仲間でないと醸し出せないロックのドライブ感は、打ち込みでは表現できないですよね。ある意味「発酵」というか、混ざり合って一体化したサウンドが素敵です。

ヤマグチ うれしいです。バンドもある意味、発酵ですよね。僕らは光る方の「発光」って曲を出してます(笑)。発酵しているものは全部美味しいですよね。特にお酒ってなんであんな美味しいんでしょうね。

SIX LOUNGE - 「発光」 Music Video

旅先で「大分に帰りたい」と思ったときに、「いいちこ」があると心が安らぐ

――お酒の話が出たのですが、みなさんは普段はお酒を飲まれるのでしょうか。

ヤマグチ お酒は3人とも飲みます。ライブが終わった後、特に対バン*2があれば打ち上げで必ず飲みます。お酒を飲むようになってから、主催の方やツアー先のお店の方、対バンする方との繋がりが一気に深まりました。飲むことで腹を割って話せることもありますから。*2 対バン:1つのライブイベントに複数のアーティストやバンドが出演すること。

――どんなお酒が好きですか。

ヤマグチ 最初はビール、その後はハイボールか麦焼酎のソーダ割のどちらかを選びます。その日のコンディションで決めていますね。

イワオ 僕は焼酎しか飲まないです。麦焼酎を水かウーロン茶か緑茶で割るのが定番です。焼酎は何の食事にも合う気がしますし、水やお茶の感覚でスイスイ飲めますね。

ナガマツ 焼酎ですね。最近は炭酸がきつく感じるので、水なんかで割って飲むことが多いです。

――「いいちこ」を飲むことは?

ナガマツ もちろん飲みます。どこに行ってもあるしね。

ヤマグチ そう、ツアーに出ても、どこにでも「いいちこ」はあるんですよ。遠い土地のメニューに「いいちこ」があると安心するし、「大分に帰りたい」と思っているときに「いいちこ」があると、心が安らぎます。

大分の良さは言葉では言えない、細胞レベルの良さ

――メジャーで全国的な人気があるSIX LOUNGEが、大分を拠点に活動し続けているのはなぜですか。

ヤマグチ 俺はもう、大分が過ごしやすいので。人が少ないし、圧倒的に時間がゆっくり流れているような気がします。時々レコーディングで東京に詰めたりするんですけど、2週間を超えると、もう無理。とにかく帰らせてくれ、あとは大分で録らせてくれって言っています(笑)。

ナガマツ 東京は刺激が多くていろんなことを吸収できるけど、大分にいるほうが落ち着けるなぁと思う。やっぱり休む期間も必要で、大分は吸収したものを持ち帰る場所かなと。だから東京と大分の2拠点もいいし、なんなら他の場所を含めた3拠点でもいいかな。でも帰ってこられる場所としての大分は大切。ずっと都会にいるのは疲れるし。

イワオ 僕は大分にこだわっているというより、生まれてからずっと大分で過ごしてきたので、大分は自分とは切っても切り離せないものです。

――その大分の良さって言葉にするとどんなところですか。

イワオ 言葉にするのは難しいですね。細胞に刷り込まれたものじゃないですかね。大分のものを食べて育っているんで、やっぱり大分に戻ると「帰ってきたな」と思います。言葉とかじゃなくて。

SIX LOUNGE(シックスラウンジ)イワオリクさんイワオリクさん(ベース)

大分のロックフェス「ジゴロック」では地元代表として頑張った

――今年4月に地元大分で開催された「ジゴロック2025〜大分“地獄極楽”ROCK FESTIVAL〜」に出演されました。トリを務めて、大分を背負うという表現もされていました。そういった意気込みや思いはありましたか。

ヤマグチ 出演できて最高にうれしかったです。大分在住アーティストは僕らだけだったんで「大分代表です」って言っちゃいましたけど、もちろんその大分を代表するという気持ちはずっと持ってました。これからも大分を大切にしながら、全国へ、そして世界へと音楽を発信していきたいと思います。

――読者の方やファンの方に向けて、大分のおすすめスポットを教えていただけますか。

ヤマグチ 僕のおすすめは丸福さんのから揚げです。アツアツの揚げたてを買って、コンビニで「いいちこ下町のハイボール」を買ってきて、公園で食べるのが最高です。

イワオ おすすめスポットは、景色のきれいな佐賀関(さがのせき)の方にある白木海岸と、そこから北西方面に行った大志生木(おおじゅうき)海岸の近くにある幸(みゆき)青果さんという、みかんの直売所ですね。いろんな品種のみかんがあって、試食して買って帰ります。とても美味しいですよ。搾って「いいちこ」に入れても美味しいかもしれません。

ナガマツ 個人的には大分市内に昔からあるミニシアターの「シネマ5」をおすすめしたいです。全く前情報のない、知らない映画でもふらっと入って観ると意外と面白かったりするので。そういう映画の楽しみ方を体験してほしいです。

――コンスタントに曲を発表されていて、今年は7月に初の野音(日比谷公園大音楽堂)でワンマン公演をやって、10月からは6都市のワンマンツアーですね。音楽的な挑戦として、今後やってみたいことはありますか。

ヤマグチ そうですね、生のストリングス*3を取り入れてみたいです。特にライブでやってみたいですね。スリーピースがかっこいいという軸は変えずに、何かそういう新しいこともやれたらいいなと思っています。*3 ストリングス:バイオリンやビオラ、チェロ、コントラバスなどの弦楽器、またはそれらのアンサンブルのこと。


【ツアー情報:SIX LOUNGE ONEMAN TOUR 2025】
東京、広島、宮城、愛知、大阪、福岡と全国6都市をまわるワンマンツアーが2025年10月16日(木)東京からスタートします。
スケジュールなど、ぜひチェックしてください。詳細はこちら:https://six-lounge.com/contents/951320?tag=all

PROFILE

SIX LOUNGE(シックスラウンジ)

ヤマグチユウモリ(G, Vo)、ナガマツシンタロウ(Dr, Cho)、イワオリク(B, Cho)のスリーピースロックンロールバンド。2012年にヤマグチとナガマツを中心に大分で結成され、2015年にイワオが加入。2018年4月にミニアルバム「夢うつつ」でメジャーデビュー。2023年3月にテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」6期のエンディングテーマ「キタカゼ」を発表。同年に2016年リリースの楽曲「リカ」がTikTokでバイラルヒットを記録し累計再生2.3億回を突破、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」にも出演。2023年9月にはフルアルバム「FANFARE」をリリース。2024年11月には「言葉にせずとも」が人気アニメ「BLEACH(ブリーチ)」の主題歌に選ばれた。