CHOMPOOシェフ・料理家森枝 幹
老舗の日本料理店、オーストラリアのイノベーティブなレストランで修業した後、ご自身で営むフードトラックやレストランで革新的な料理を提供してきた森枝幹(もりえだ・かん)シェフ。現在は東京・渋谷PARCO(パルコ)にある、タイ料理店「CHOMPOO(チョンプー)」を人気店にしています。そんな森枝シェフの原点である和食の発酵料理といえば、ぬか漬け。定番のきゅうりのほかに、アボカドのぬか漬けで体も整うレシピを教えてもらいました。
料理:森枝幹 / 構成:森綾 / 写真:木村文平
お店ではタイ料理をつくっていますが、昔から自宅ではぬか漬けを常備しています。自宅近所のスーパーマーケットで野菜を仕入れて、ぬか床に入れて、定期的にかき混ぜるだけ。ぬか漬けには、腸内環境の改善や疲労回復効果などがあるとされています。
ぬか漬けに使う「ぬか床」は生ぬか(米ぬか)と同じ分量の水、ぬかに対して約13%の塩に、昆布や唐辛子などを入れてつくりますが、最初からつくるのはちょっとハードルが高いかもしれません。最近はあらかじめ発酵している「ぬか床」が売られています。秋冬は涼しいところに置いておけば十分だし、夏は冷蔵庫の野菜室で保管すれば大丈夫。そこから始めてみるのもアリだと思います。
ポイントは少ししょっぱい、海水くらいの塩気をキープすること。野菜から水分が出るので、追いぬかをしたり、塩を入れたりと微調整しながら自分のぬか床に育てていきます。ぬか床に漬けるものは、定番のなすやきゅうり、大根だけでなく、みょうがやにんじんも美味しいです。野菜だけではなく、いわしやお肉も美味しい。ゆで卵もいいですね。キッチンペーパーに巻いた豆腐もいい。チーズのように滋味深い味になります。
今回は、東京・港区の「麻布台ヒルズ」にある「菜香や(なかや)」さんのぬか床を使用して、お店でも人気の商品、アボカドのぬか漬けをやってみました。アボカドを縞(しま)むき*にして、2日ほどぬか床に漬けただけ。これが絶品で、アボカドは栄養価が高く「森のバター」と言われますが、「森の発酵バター」になるわけですね。ぬか漬けにするアボカドを選ぶときは、少し硬めが正解です。* 縞むき:なすやきゅうりなどの皮をむく際、縦に細長く皮を残して縞模様になるようにむくむき方。「すだれむき」ともいう。
きゅうりも2日ほどぬか床に漬け、甘酢漬けのらっきょうと合わせてタルタルをつくりました。ケイパーやピクルスの代わりに、きゅうりのぬか漬けを使うと、ちょっとさっぱり、いろんな料理になじみやすいタルタルになります。サクサク衣のフライドチキンにかけるのは、子どもから大人まで大好きな味。フライドチキンは衣に少しスパイスを混ぜてエスニック風にしましたが、いつものから揚げで構いません。
ぬか漬けの味は、その家庭、かき混ぜる人の手によって変わっていくものです。これが正しい、というのはありませんから、いろいろとチャレンジしてやってみると楽しいと思います。失敗もまた、経験の1つ。次に役立つ知恵になりますから。和食だけにとどまらず、自由に使ってみてください。
ぬか漬けアボカド・・・1個
松の実(少しフライパンで炒る)・・・少々
カンパーニュやバケット・・・適量
エキストラバージンオリーブオイル・・・適量
ぬか漬けきゅうり・・・1/2本(約20g)
らっきょうの甘酢漬け・・・5〜6個
ゆで卵・・・1個
〈A〉
マヨネーズ・・・80g
牛乳・・・大さじ2
らっきょうの甘酢漬けの汁・・・小さじ1強
白胡椒・・・小さじ1
塩・・・ひとつまみ
▼材料
鶏もも肉・・・1枚
揚げ油・・・適量
〈B〉
片栗粉・・・20g
小麦粉・・・20g
米粉・・・20g
水・・・60cc
ターメリック・・・少々
七味・・・少々
塩・・・ひとつまみ
▼作り方
PROFILE
森枝幹(もりえだ・かん)
1986年生まれ。調理師専門学校を卒業後、オーストラリアへ留学。世界のベストレストランの常連「Tetsuya’s」(豪州・シドニー)で料理を学び、帰国後は京料理の「湖月」(東京・表参道)で修業。その後、マンダリン オリエンタル 東京(東京・日本橋)内の「タパス モラキュラーバー」で修業を積み、2011年に独立。東京・下北沢の「Salmon&Trout(サーモン・アンド・トラウト)」(現在閉店中)のシェフとなり人気を博した後、2019年に東京・渋谷PARCOにタイ料理店「CHOMPOO(チョンプー)」をオープン。ほかにフードマガジンの発行や、レストランプロデュース、イベント開催など、従来の料理人の枠にとらわれず活動を続ける。