風林
光水
photo&writing:相原 正明
国内外の荘厳で迫力ある風景写真を精力的に発表されている写真家の相原正明さん。
大分の地を巡り、撮り下ろしの作品を「koji note」に公開します。
第15回のテーマは「新緑」です。
風林
光水
photo&writing:相原 正明
国内外の荘厳で迫力ある風景写真を精力的に発表されている写真家の相原正明さん。
大分の地を巡り、撮り下ろしの作品を「koji note」に公開します。
第15回のテーマは「新緑」です。
国東の山並みが緑に包まれる
朝6時、宇佐市。初夏だというのに肌寒さのなか、「宇佐のマチュピチュ」展望台を目指す。南米ペルーの世界遺産マチュピチュをほうふつとさせる円錐形の岩山と棚田の風景が印象的だが、それだけではなく、耶馬渓(やばけい)から国東(くにさき)半島方面までの山並みを見渡す絶好の新緑観賞スポット。途中の国道387号線沿いの水田に映り込む新緑や藤の花が初夏を感じさせる。
色とりどりの初夏の水辺
山を下りて向かったのが、僕が大分で最も好きな場所・岳切渓谷(たっきりけいこく)。せせらぎが岩盤の上を流れ、渓谷を覆う緑が水面に映り込む。遊歩道の上空に架けられた色とりどりの風車の赤や青と、新緑との対比が美しい。水とのコラボならば、国東半島の行入(ぎょうにゅう)ダムにはためくこいのぼりも見事。新緑の中を数多くのこいのぼりが泳ぐさまは目に焼き付く光景だ。
紅葉の名所は新緑の名所
国東半島は緑が濃い。紅葉でおなじみの両子寺(ふたごじ)も新緑と苔が美しい。紅葉の名所は新緑の名所でもあるのだ。国東半島から本耶馬渓に通じる県道で立派な藤の木を撮影していると、山の方から軽トラに乗ってきたおじいさんが通りがかりに、「木を美しく撮ってくださいね」と声をかけてきた。きれいに撮ってと言われることはよくあるが、美しく撮ってと言われたのは初めて。もしかしておじいさんは木の精なのか?
日田に咲き誇る2万本のシャクナゲ
今回は、以前から気になっていた、日田市の「上津江(かみつえ)シャクナゲ園」にも訪れた。広大な敷地から新緑の山を見渡せて、斜面を色とりどりの約2万本のシャクナゲが埋め尽くす。これを見るためだけでも日田に来る価値はある。
新緑の香りに満たされながら、国東市の竹田津(たけたづ)港からフェリーで大分を後にした。大分は桜や紅葉だけでなく、新緑も魅力的である。
PROFILE
相原正明(あいはら・まさあき)
写真家。1958年生まれ。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影。1988年に8年勤務した広告会社を退社し、オートバイによる豪州単独撮影ツーリング実施。豪州最大規模の写真ギャラリー「ウィルダネスギャラリー」で日本人初の大型写真展開催。他にもドイツ、アメリカ、韓国でも個展を開催。タスマニア州政府フレンズ・オブ・タスマニア(親善大使)の称号を持つ。「しずくの国」(Echell-1)、「ちいさないのち」(小学館)、「誰も伝えなかったランドスケープフォトの極意」(玄光社)など著書多数。