酒づくりの過程において発生する製造副産物について、有効な機能を見極め、原材料として利用を図ることで、廃棄ゼロ、資源循環を目指して様々な取り組みを行っています。
製造工程の各段階において、どのようなものが発生しているのかを管理し、適切な分類を行うことで、適切な処理を施し、食品素材や肥料・飼料、エネルギー源としての利用を進めています。
製造工程と発生する廃棄物の再資源化
日本酒の副産物である「酒粕」は、白く柔らかい固体で、よく食品として一般家庭でも粕汁や粕漬などで使われます。本格麦焼酎「いいちこ」の製造工程で発生する大麦発酵液(焼酎粕)は、麹や酵母の作用によってできた安全で有益な成分を多く含んだ副産物でもあります。
この大麦発酵液を以前は法律で定められた管理の中で海に投入していましたが、国際的な環境上の課題から陸上での対応が行われるようになりました。そこで始めたのが、濃縮・乾燥などによる牛の飼料原料としての利用です。現在は、粗ろ過や清澄ろ過、濃縮工程を経た固形分や濃縮液は、さまざまな飼料や肥料の原料として利用されています。
また、大麦発酵液には、人にも有益な成分が多く含まれています。そこで1999年から、大麦発酵液の機能性に関する本格的な研究に着手しました。大学や外部の研究機関と連携して、人に有益な機能性の探索と有効成分の発見、さらには社会課題を解決するものづくりに活かすことを目指して取り組んでいます。
1979年
近隣農地へ還元
1985年
海洋投入
1986年
濃縮飼料化
1994年
乾燥飼料化
2000年8月
海洋投入終了
2001年
食品素材加工
2009年
メタン発酵
2010年12月
気流乾燥終了
2021年8月
「省エネ・脱炭素推進」のため乾燥終了
三和研究所では、酒づくりで長年培ってきた「麹と発酵」の技術をベースに、人と人、人と自然との豊かな関係を目指し、社会の問題に向き合うさまざまな研究を行っています。三和酒類が研究を通して目指しているのは、かけがえのない自然の恵みと麹と発酵の力で、世界にたくさんの幸せな“Wa”をつくり出していくことです。
三和研究所では品質管理、製造技術の探求だけでなく、発酵副産物の有効活用などの研究も行っています。また、新たな視点での課題解決や事業創出を行うために、一企業の枠を超えた多岐にわたるテーマでの産学官連携を強化し、地域と社会に貢献できる優秀な人材の育成にあたるとともに、研究を通した社会課題の解決に取り組んでいます。
三和酒類は2000年の初めから、ガラス瓶の軽量化への改良や、強度を維持しながら厚みを薄くした段ボールを使用するなど、包装資材における環境配慮に取り組んでいます。
今後は、環境負荷低減につながる素材の選定など、さらに改良を進めていきます。
2000年以降の包装資材の改良実績例
ガラス瓶の軽量化
商品としてのデザイン性にも配慮した軽量化
段ボール類の省資源化
厚みやライナー(段ボールの表裏両面に使用するボール紙)の改良
紙資源の環境配慮
FSC®認証紙の利用
プラスチック類の環境配慮
バンドル袋のバイオマス原料利用
食品事業部では、以下のパーパスを基に取り組みを進めています。
「三和酒類の麹/発酵文化のチャレンジを実践し、世界中の人々の『健康に対して一歩を踏み出そうとする気持ち』をサポートします。」
本格麦焼酎「いいちこ」の製造工程で発生する大麦発酵液には大麦由来の有用な成分が含まれており、その有効成分を抽出したものが「発酵大麦エキス」です
三和酒類ではこの成分に着目し、長年様々な研究成果や製品試験データを蓄積しています。
食品事業部では、【大麦の力】【発酵の力】を活かした独自の機能性素材を開発しています。
自然のめぐみと麹・酵母・乳酸菌による発酵技術を活用し、効果・効能に関する確固たるエビデンスと酒類事業で培った品質へのこだわりに基づき、安心して続けられる心地よい体感・実感を提供することで、お客様の日常をサポートする伴侶でありたい、と考えています。
2009年には、拝田グリーンバイオ事業所に食品素材専用の工場を建設。2015年には、食品安全の規格であるFSSC22000を取得しました。徹底した衛生管理の下、安全・安心な体制で食品素材製造を行っています。
発酵大麦エキスの新たな機能性の研究を進める中、発酵大麦エキスには尿酸値を下げたり、肝機能を保護したりする働きがあることが分かってきました。
研究結果をもとに、この機能特性を最大限に活用した新たな食品素材「発酵大麦エキス・アルコケア®」を開発、販売するなど、発酵大麦エキスは新たな天然食品素材として、様々な食品への使用が期待されます。
これからも、醸造で培った発酵技術と健康機能に関する確かな科学的根拠に基づく、人とお酒の良い関係づくり、人々の活力ある健康な生活に貢献することを目指し、さらに機能性に優れた食品素材を提供できるよう研究を続けていきます。
大麦発酵液(焼酎粕)には様々な栄養分が残っているため、飼料や肥料の原料として利用されています。
これらの飼料・肥料は、大分県を中心とした地域で利用されています。例えば、大麦を育てるための肥料として使い、収穫した大麦が再び焼酎の原料になったり、飼料として育った牛やブタが食料として牛乳や肉となったりするなど、地域の農業をはじめとする産業を支える循環を生み出しています。
充填工程の検査で発生する「紙パック」やオフィス古紙の「OA用紙」は、製紙工場に持ち込み、トイレットペーパーへ加工し、三和酒類で利用されています。
紙パックの損紙については、フィルム部分の分離など福祉施設の協力もいただき、採取したパルプ原料からカレンダーや名刺、レター用紙として利用しています。